虹のかなたに
日本を代表するアニメ作家と言えば、いまや世界に冠たる宮崎駿に、マトリック
スのホントの生みの親・押井守ときて、さてもう一人と言われたらアナタは誰を
あげますか? 私は迷わず富野由悠紀をあげますね。言わずと知れた、アノ「機
動戦士ガンダム」の生みの親であられます。
製作されて25年の歳月が流れても今だ風化せず、新雑誌・新刊が売り出され、そ
の世界観を受け継ぐ新作が放映され高い支持を受ける。近年の日本のあらゆる創
作物の中で、こんな影響力を生み出した作品なんてあるだろうか? 私は思いつ
かない。実は富野監督の他の作品を私はほとんど知らないんだけど、(富野監督
には申し訳ないが)別に全然構わない。「ガンダム」という作品ひとつで富野監
督は伝説を生み出し、(ご本人はそんなこと言われてもウレシクナイだろうが)
富野監督の才気の全ては「ガンダム」に反映されていると私は思うから。
「アニメで初めてリアルな戦争を描いた」ガンダムとは、なんなのか。私は
「(若者の)孤立」と「共感」と「自滅」を明確に描く事に挑戦したドラマなん
だと思ってます。そしてそれは富野監督の孤立とも重なっていく・・・。
富野監督は、現実とかけ離れず、癒着せずに仕事をしようとする。「メルヘン」
にも「思想」にも傾斜せず、「芸術」にも「インディ」にも走らず、商業ベース
での娯楽作品でちゃんとした中身をつくるのは、とても大変な仕事だ。「ガンダ
ム」が突き抜けているのは、それをクリアしてしまったからだと思いますね。そ
してそんな仕事には必ず「孤立」がついてまわる。
愚かな現実の中で、「気づいてしまった者」は果たしてどうするのか。その具現
化した姿が、アムロ・レイであり、シャア・アズナブルであり、富野監督自身で
もある。ガンダムのリアルの根底はそこにあるんじゃないかなー。
そして、その事がもっとも象徴的に描かれているのが、「ファーストガンダム」
最終作、「逆襲のシャア」だと思うんです。
地球居住者のあまりのだらけぶりに逆ギレしたシャアは、実力行使で地球を「住
めない場所」にしようとする。アムロはその企みを阻止すべく立ち上がる。そし
てこの二人は第1作から変わることなく「孤立」している。その二人の孤立を唯
一繋げる可能性があったララァの事を、二人は今でも忘れられないでいる・・・。
結局二人は、シャアが地球に落下させた隕石と共に、行方がわからなくなるんだ
けど、その二人が最後に交す会話が余りにも、せつない。
隕石と共に落下する二人の機体。その二人のコクピットからは「サイコフレー
ム」という「人の意識を感知できる金属」がオーバーロードをおこし、虹のよう
な光を放ち始める。その光に招かれるように、敵味方のモビルスーツが隕石落下
を阻止するが如く近寄ってくる。しかし、やがて、摩擦熱に耐えかねて爆発する
機体がでてくる・・・。
「やめろ!こんなバカなことにつきあわないでいい!」
アムロの叫びに呼応するように、サイコフレームの光はモビルスーツを跳ね飛ば
していく!
シャアは光に包まれたコクピットの中で、自分に恐怖がなく、むしろ「安らぎ」
を感じていることに気づく。
「そうか・・・しかし、この暖かさを持った人間が地球さえも破壊するんだ!それ
を解るんだよ、アムロ!!」
「解ってるよ!だから!世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろう!!」
そんな二人の姿は、シャアの「ララァ・スンは私の母になってくれたかもしれな
かった女性だ!そのララァを殺したお前に言えた事か!!」という言葉を最後に消
え、サイコフレームの光の帯は隕石の軌道を変える。地球は救われた。光の帯
は、虹のように優しく美しく広がり、人々はそれを黙って見上げる・・・。
孤立なんて誰も望まない。しかし人は色んな事が明確になればなる程、否が応で
も孤立する。でもそれだけでは何も解決はしない。それを脱する方法はきっと只
一つ、「共感」なんだ。しかし、虹のような「心の光」を見ただけで、一体どれ
ほどの共感を人々におこさせることができるのだろう。
さて、今年。ガンダムの続編である「Z(ぜーた)ガンダム」が20年目にして
(!)映画化されます。テレビ版の再編集なんだけど、なんと結末を変える模
様。テレビ版は最後主人公の自我が崩壊するという目も当てられない、キツイ結
末だったんですが、これがどうやら希望に満ちた(?)結末になるらしい。既
に、僕達は「逆襲のシャア」という悲劇の結末を目撃しているのにも関わらず。
富野監督がそうするのであれば、どういう結末になるかは自明の理だと思うな。
きっと、それは・・・
孤立を越えて共感したもの同士が、手を取り合って、「ここから始めようね」と
認めあえる物語。「周囲の戦争」にただ巻き込まれるのでなく、自分達から始め
られる、そのスタートラインをひくというハッピーエンド・・・。
(2005/05/16)
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